ナリタトップロードとグラスワンダーの引退後

●ナリタトップロードの引退後

『ナリタトップロード路上にて』という本で、現役時代のトップロードについては、今まで他の人間では触れられなかったことまで知ることができた。数々の買重なエピソードが語るのは、彼がいかに多くの人に深く愛されたかということだ。

しかし、トップロード自身については、社台スタリオンステーション(以降社台ss)にやってくる直前、数分間しか会っておらず「面識がない」に等しい。わくわくドキドキしながらの訪問となった。タニJギムレットの項でも触れるが、やけに相性のいいこの2頭はつかず離れず似たような行動を繰り返す。気さくなダービー馬を撮影している間も、トップロードはこちらを見つめ、早く自分もかまってくれと言わんばかりの表情で待っていた。

淡い栗毛が陽光に美しく映え、上背のある堂々とした骨格の馬体に、あどけないカワイイ顔が印象的だ。しかし、柵にぴったり寄っていてやる気がない。ところが、トップロードは柵越しにずっとついてくるのだ。カワイイ、でも困った。ふと、見学台でファンたちがひたとトップロードを見つめているのに気付き、「おいでおいで\」と声をかけながら見学台に向かって歩き始めると、案の定ついてくる。見学台の前でストップし、「はい、お顔上げて!」と頼むと、一瞬ではあるが柵から顔を出す火サービス。一斉にシャッターを押す音とともに歓声が上がるのを聞き、やっぱり人気者だと実憾した。撮影ポイントを変えて再挑戦し、数カット撮ってからトウカイテイオーのバドックに移動しようとしたが、視線を感じて振り返ると「もう行っちゃうの」とばかりに見送っているトップロードが。後ろ愛を引かれる思いで移動した。こんな人懐こいトップロードだが、お仕事ぶりはどうだろうか。「受胎条件で100万円、オーナーのご厚5私によるお得な設定もあり、130頭くらいは付いてると思います。なにより、馬格がいいし、脚元もすっきりして、骨格も素晴らしい。馬っ気も、社台ss史上5本の指に入るほど強いんじゃないかな。ノーザンテースト、サッカーボーイ、メジロマックイーン、アドマイヤベガ、そしてトップロードというところですか。試験種付けも『楽勝Jつて感じでした(笑)」徳武さんも太鼓判を押す馬っ気の強さで、楽しく素早くお仕事をこなす姿を想像してしまった。集牧の時間、仲良しのタニノギムレットが先に連れて行かれ、その様子をじっと見つめていたトップロードは一声高くいなないて、走り始めた。もっとも、ちょっと走っただけですぐに出入り口まで戻り、タニノギムレットが去った方向を見つめていた。もしかしたら、一緒に帰りたかったのかもしれない。サンデーがマックに片思いしている感じだったのだが、トップロードとタニノギムレットはどうやら「両思い」のようだ。お互いに、いい友達ができてよかったね。

●グラスワンダーのその後

スペシャルウィークの放牧地を見学していると、厩舎と種付場への通路の間にある芝生を、独特のオレンジがかった栗毛を輝かせながら、小走りに種付場に向かう姿を目撃。がっちりと退しい筋肉、額のホームベース型の星、グラスワンダーだ。シャンクを持つスタッフも速度を合わせて小走りになっているのだが、グラス自身はまるでスキップをしているように見える。「種付、種付、競しいなP」と、鼻歌まじりにお仕事に向かうという感じがするのが可笑しい。しかも、すでにスタンバイOKでブラブラさせながらのスキップなのだ。見学を続けていて、今度はうって変わってゆったり、ノシノシと歩いてくる姿も目撃。それにしても、戻ってくるのが早い。種付場に行く前にすでに準備完了なのだから、当然か。スキップとノシノシのギャップだけでも可笑しかったのだが、放牧地で撮影に人るとさらに追い討ちがあった。筆者が近付いても、横目でチラッと「あ、またオレの撮影だな」という表情をするが、そのまま草を食み続けて顔を上げない。

気の向くままにモグモグしながら方向転換をするグラスを追って牧柵の周囲を回るが、状況は変わらない。あきらめて、他の放牧地に行こうと移動して20メートルほど移動し、ふと振り返るとキッと首を上げたグラスがある方向を見つめている。隣接するノーザンFの方向だ。そう、牝馬が噺いたのだ。空の一点を見つめて微動だにしない。「ああっ、そのまま\ーっ」と心で叫び、グラスが見つめる方向に小走りで移動したが、時すでに遅し。グラスは青平に戻っている。また牝馬が嗚いてくれるのを期待して10分待機するが、ダメ。あきらめてまた移動しようとして振りかえると、またノーザンFの方を見つめているグラスが……。この奇妙な追いかけっこを何回繰り返しただろうか。ヘトヘ卜になってグラスとノーザンFの問でスタンバイしていて、やっとのことで撮影に成功したのだ。それにしても、なんだか現役の頃の顔と感じが違う。首を捻りながら事務所に戻った。「ああ、あれね。シーズン中はたくさんの生産者の方が来るから、キレイにして馬っぷりがいいと宣伝になるでしょう?それでシッポと前髪をカットしたんだけど、前幾がちょーっとショートカットになっちゃって(笑)」と徳武さん。そう、感じが違ったのは、前嬰が坊ちゃん刈りになっていたからなのだ。グラスは、あどけない目付きだが、顔の幅がある、ガッチリしたタイプなので、坊ちゃん刈りになると、う\\\ん……、あとは皆さんのご想像におまかせします。でも、グラス自身の威厳と迫力は、スキップしてもショートカットでも変わらない。何より、すっごく楽しくお仕事して、リラックスして日々を過ごしているのだ。筆者は、羨ましさすら感じながら、放牧地を後にした。

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